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「欠けの金継ぎ」「ヒビの金繕い」徹底解説

金継ぎコフレ販売開始以降、お陰様でたくさんの反響を頂き、大変ご好評を頂いております。
特に令和2年4月から動画解説を新たに加えたことで、より多くのお客様から高い評価を頂けるようになりました。
一方で、説明書や動画解説では説明しきれない、金継ぎに関するご質問も数多く頂くようになりました。
ココでは、その質問の中で特に多い「欠けの金継ぎ」と「ヒビの金繕い」について解説していこうと思います。
 
金継ぎコフレの説明書や動画解説では、お皿が割れた時の接着を基本に説明しています。
でも動画の様に、キレイに真っ二つに割れるケースはむしろ少ないかもしれません。
もっと複雑に割れたり、割れた破片が無くなったり、欠けたり、ひびが入ったり・・・。
ココでは、『欠けた部分の修復』『ヒビの金繕い』この二つのテーマについて解説します。



1.『欠けた部分の修復』
 


金継ぎコフレユーザーから寄せられる質問で圧倒的に多いのが、「欠けの金継ぎ」のやり方について。
それもそのはず、金継ぎコフレでは欠けの対処方法について十分に説明しきれていません。申し訳ありません。
でも安心して下さい。基本的にやることに大きな差はありません。

※金継ぎコフレに入っている漆や材料・道具で説明致します。





【深さが2mm程度までの欠けを修復する場合】


ここでは、欠けの深さが2mm程度までの小さな欠け(欠けた部分が無いと想定)を修復したい場合の説明をします。

 

 
【1】まず、欠けの断面に「金継用上生漆」を付属の代用蒔絵筆または地塗筆で塗り、ティッシュやウエスなどで塗った漆を軽く抑えて取ります。ムロで3日程漆を硬化させます。

※ムロの説明については説明書や動画をご確認下さい。
※筆の洗い方などは動画解説をご覧ください。



 




【2】説明書P4の工程2「錆付け」または「動画解説Part5錆付け・器の接着と穴埋め」と同様に錆漆を作ります。


【3】付属のプラスチックベラ先端角をうまく使い、出来た錆漆を欠けている部分に厚み1mmを目安に付けます(動画解説Part5参照)。その後ムロに入れ硬化(1日)→錆付け(1mm厚)→硬化の工程を欠けた部分の凹みが埋まるまで繰り返します(重ね付けする前に研磨は不要)。錆は硬化すると水分が蒸発し嵩が減りますので、仕上げたい高さより少し盛り上がるように付けて下さい。最後はムロで1週間程硬化させます。一度に厚く錆を付けてしまうと、漆の硬化が鈍り正常に固まらないことがありますので、薄く、回数(約1mmずつを目安に)を繰り返して下さい。





 

 


【4】錆漆がしっかり硬化したら、付属の耐水ペーパー#600→#800の順に水研ぎし、錆付面を平滑にします。
詳細は説明書P4「中塗り」1または「動画解説Part6錆研ぎ」をご覧ください。
錆漆が硬化後、硬化前より痩せて凹みが出る事もあります。
その場合は上からもう一度錆付けをし、硬化後も凹みが無い状態で水研ぎして下さい。


【5】錆研ぎ後は、説明書・動画解説と同じやり方で進めて下さい。






【深さが2mm以上の欠けを修復する場合】

 



大きく欠けた場合は、ヒビも同時に入ってしまうことが多々あります。その場合は、まず「ヒビの繕い」(あとから解説)の1の工程を行い、ヒビを漆で止めてから欠けた部分の作業に入ってください。
 
 

【1】まず、欠けの断面に「金継用上生漆」を付属の代用蒔絵筆または地塗筆で塗り、ティッシュやウエスなどで塗った漆を軽く抑えて取ります。ムロで3日程漆を硬化させます。

※ムロの説明については説明書や動画をご確認下さい。
※筆の洗い方などは動画解説をご覧ください。



 



【2】「刻苧(コクソ)漆」を作る。

説明書P3「麦漆を作る」または動画解説Part2「準備〜麦漆つくり」の説明通り麦漆を作ります。
完成した麦漆1に対してケヤキの木粉(別売)を2の割合で混ぜ刻苧漆を作ります。
(様子を見て、固めの粘土状になるまで木粉を足して混ぜてください。少々混ぜすぎなくらいがちょうど良いです)



 



【3】刻苧漆を、大きく欠けた部分に少しずつ押し込んで付けていきます。
器と密着させるようにプラスチックベラの先端角を使って色々な方向から押し付けてください。
ヘラが難しければ、下写真のようにサランラップ越しに指で作業しましょう(必ず手袋着用)。
最後に刻苧漆で埋めた部分をサランラップで覆って指でつまみながら形を整えます。
※プラスチックベラで作業しにくい場合は、先の細い市販の竹ベラなどを使用すると便利です。
モノタロウなどのネット通販で購入出来ます。
作った刻苧漆は外側からどんどん固まっていってしまうので、内側の柔らかい部分を使うようにすると作業がしやすいです。



 





【4】サランラップを外して、ムロで1週間硬化させます。余った刻苧漆を一緒に入れておくと、硬化の目安になります。
硬化したら、はみ出した刻苧漆をカッターで削り、大まかに形を整えます。
中の方がまだ柔らかい場合は、カッターで大まかに削った後、再度ムロで1週間硬化させてください。
これ以降、作業中に刻苧漆が取れてしまう場合もあります。
その時は説明書P3または「動画解説Part2・Part3」の要領で麦漆を作り、取れた刻苧漆をその麦漆で器に接着するか、はじめから刻苧漆を付け直して下さい。




 



【5】付属の耐水ペーパー#600で削り、形を整えます。


 
 

 


【6】説明書P4の工程2「錆付け」または「動画解説Part5錆付け・器の接着と穴埋め」と同様に錆漆を作り、刻苧漆の表面に塗り、細かい凹みを埋めていきます。ムロで4〜5日硬化。


 


【7】錆漆がしっかり硬化したら、付属の耐水ペーパー#600→#800の順に水研ぎし、錆付面を平滑にします。
刻苧漆が多少出てきてしまっても大丈夫です。
詳細は説明書P4「中塗り」1または「動画解説Part6錆研ぎ」をご覧ください。 


【8】この後は説明書・動画解説と同じやり方で進めて下さい。ヒビと同時進行している場合は、中塗りから同様の工程で進めてください。
 
 
ということで、今回は「欠け」の金継ぎについて説明してきました。欠けといっても大小様々。
もしかしたら割れるケースよりも欠けるケースの方が多いかもしれませんね。
動画解説と組み合わせて、「欠け」の金継ぎにも是非挑戦してみて下さい。
上記の説明でわからない時は、これまでのように当社までご連絡下さい。
 
 
次は「ヒビの金繕い」について解説します。





2.『ヒビの金繕い』
 



割れたり欠けた場合の金継ぎはイメージ出来ましたでしょうか?
次に説明するのは「ヒビ」への対処。
金継ぎコフレユーザーからの問い合わせで2番目に多いのが、このヒビ割れの金繕いについて。
ここではその工程を説明します。



 



【1】ヒビに漆を吸い込ませます。「金継用上生漆」をテレピン油と1:1で混ぜ、付属の代用蒔絵筆を使って、ヒビに沿って塗っていきます。塗ったら、漆をヒビの中まで浸透させるイメージでティッシュやウエスなどを押し当てます。
その後漆を綺麗に拭き取り、ヒビの中だけ漆を残します。それを2回繰り返し、ムロで1日漆を硬化させます。



 





【2】生漆を吸い込ませた後、説明書P4「中塗り」または動画解説Part7「中塗り」と同様にヒビ割れに沿って絵漆を塗っていきます。ムロで最低3日硬化。


【ちょっと応用編】

ヒビの場合、割れや欠けに比べ、漆を塗る線(面積)が細く、漆がヒビから若干はみ出して、釉薬のかかった陶磁器部分に塗ることも多くなります。漆は、釉薬などのガラス質への密着性が悪く、付属の絵漆を塗っても剥離してしまうこともあります。そこでお勧めするのが「ガラス漆」(別売)。
ガラスなどと密着を良くするために10%カップリング剤を混合した特殊な漆で、3週間ムロで硬化させると、かなり密着度が高まります。食品衛生法にも適合していますので安心してご使用頂けます。

尚、「ガラス漆」は「ガラス用絵漆」の他、黒色など様々な色がございます。
中塗りでしたら「ガラス漆上黒呂色」という黒色の漆で塗ってもいいですし、もちろん「ガラス漆絵漆」でもOK。ムロで3週間以上硬化させて下さい。



 



【3】しっかり漆が硬化したら(ガラス漆の場合は3週間以上が好ましい)、説明書P5「地塗り」または動画解説Part8「中塗り研ぎ〜粉入れ」と同じ要領で、中塗りした絵漆またはガラス漆絵漆(ガラス漆上黒呂色)を水研ぎ。その後付属の絵漆(ガラス漆でもガラス漆でなくてもOK)で地塗りして金粉を蒔いていきます。詳しくは説明書P5「地塗り・粉入れ」または動画解説Part8「中塗り研ぎ〜粉入れ」をご覧ください。それ以降は、説明書・動画解説と同じ工程で進めて下さい。
 
以上、ヒビ割れの対処方法について解説しました。慣れてきて、より強度を求めたい場合は追加注文が必要ですが、ガラス漆のご使用も是非ご検討下さい。

 
監修 suosikki
 

 




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